CFPという資格には、試験のあとにもうひとつ関門があります。通算3年の実務経験です。
金融機関に勤めていれば、日々の仕事がそのまま当てはまります。けれど金融の仕事をしていない人は、ここで先に進めなくなります。私もそうでした。
CFPの最後の関門は、試験ではありませんでした
CFPの認定を受けるには、日本FP協会が4つの条件を挙げています。①CFP資格審査試験の6課目すべてに合格すること、②合格後にCFPエントリー研修を修了すること、③通算で3年以上の実務経験があること、④協会の会員倫理規程などを守る誓約をすること。この4つです。

①と②は、勉強と手続きで進みます。エントリー研修は受講料が無料の通信研修(eラーニング)で、試験の合格発表のあと年2回、7月下旬ごろと12月下旬ごろに2週間程度ずつ開かれます。①の試験そのものについては、別の記事に書いています。
そもそもFPの資格を取るところから、という方はFP3級の受け方の記事もあります。
問題は③でした。実務経験3年。資格取得当時、私は金融に関する仕事はしていませんでした。
私が実務経験として申請したのは、患者さんへの制度説明でした
私は長く医療機関で働いてきました。そこでしていたことのひとつが、患者さんへの制度の説明です。医療費が高額になったときの高額療養費制度のこと、介護保険の申請のこと。入院や退院の前後で、お金と制度の話をする場面がありました。
資格の要件を見ていたとき、私は自分がその対象になるとは思っていませんでした。気づいたのは、協会が出している「実務経験要件該当例」の一覧を開いたときです。そこに医療・福祉・介護という欄があり、こう書かれていました。
患者の社会保障等に係る相談/患者に対する介護保険等の説明
(日本FP協会「実務経験要件該当例」)
私がしていたことが、そのまま並んでいました。申請してみたところ、一発で認められました。
こんな経験でも認められる。これがこの記事でいちばん伝えたいことです。
要件は、2つしか書かれていません
協会が実務経験として求めているのは、次の2つを満たすことだけです。
「FP実務の6ステップ」のいずれかを経験していること。 6ステップとは、①顧客との関係確立とその明確化、②顧客データの収集と目標の明確化、③顧客のファイナンス状態の分析と評価、戦略の検討、④ファイナンシャル・プランの作成と提示、⑤ファイナンシャル・プランの実行援助、⑥ファイナンシャル・プランの定期的見直し、を指します。6つ全部ではなく、いずれかです。
「顧客(サービスを受ける者)」がいること。 親族に対するものでなければ、ボランティアでもかまいません。
そして協会は、この要件について次のように書いています。
業種・職種・雇用形態等によって狭義に定義するものではありません。
(日本FP協会「CFP資格審査試験合格後の実務経験について」)
さらに「サービスの対価が有料であるか否かは問いません」とも明記されています。業種で決まる要件ではない、というのが協会の立て付けです。
公式の一覧に、金融以外の仕事が並んでいます
「実務経験要件該当例」の一覧には、金融・保険・不動産・士業のほかに、金融とは関係のない業種がいくつも載っています。協会の表記のまま並べます。
| 業種 | 該当例 |
|---|---|
| 医療・福祉・介護 | 患者の社会保障等に係る相談/患者に対する介護保険等の説明 |
| その他一般事業会社 | 事業承継に係る提案/資金運用に係る業務/取引先へのFP分野コンサルティング/社員の総務福利厚生に係る業務(FP分野に関する相談・社員教育等)/確定拠出年金等に係る業務 |
| 官公庁・自治体・公益法人等 | 税金に関する相談・教育等/公的年金・社会保険に係る相談・講師業務等/FP分野に関する各種生活相談/消費者教育の企画・運営/職員の総務福利厚生に係る業務 |
| 教育・学校関係者 | 金融教育の企画・教材制作・運営/FP資格取得講座の講師/保護者に対する教育資金プラン等の提案/認定研修の提案書添削 |
| 情報通信・サービス・マスコミ・出版等 | 金融関連記事の企画・制作・情報提供等/FP分野に関する執筆・情報提供等 |
| その他 | ボランティアによる相談・講師業務等(FP分野に関する内容で、かつ親族に対するものではないこと) |
会社の総務で福利厚生を担当している人、自治体の窓口で年金や国民健康保険の相談を受けている人、学校で金融教育をしている人。お金や制度のことをブログや記事に書いている人も、一覧の「FP分野に関する執筆・情報提供等」に該当します。ここに当てはまる人は、金融機関の外にもかなりいるはずです。
ボランティアの欄には、「継続性のあるものが対象」という条件がついています。単発・断続的なものは対象になりません。
なお、この一覧について協会はこうも書いています。
これらは参考として示すものであり、実際の審査は申請内容に基づき個別に行っています。
(日本FP協会「実務経験要件該当例」)
一覧に載っている=自動的に通る、ではありません。同じページに「ご自身の経験をFP6分野との関連性が明確になるように記載してください」とあります。書き方の側に、やることが残っています。
3年は、合格の10年前までさかのぼって数えます
期間の数え方にも決まりがあります。対象になるのは、CFP資格審査試験の全6課目に合格した日の10年前から、CFP資格の認定日まで。この間に通算で3年以上あれば、条件を満たします。
「通算で」なので、続いている必要はありません。そして「合格日の10年前から」なので、試験を受けるずっと前の経験も数えられます。私が出したのも、この過去にさかのぼる分でした。
この期間のルールは、2028年4月から「実務経験申請日の前10年間」に変わります(協会の予告)。数え方の起点が、合格日から申請日に移ります。

実務がまったくなくても、研修36時間で3年になります
一覧のどこにも当てはまらない場合や、年数が足りない場合のために、「みなし実務経験」という仕組みがあります。

| みなされる経験 | 換算 |
|---|---|
| 認定教育機関の「みなし実務研修」の修了 | 研修1時間につき1か月 |
| 協会の「プロフェッショナルFP研修」の修了 | 同じ |
| 協会の「レジデンシーコース」の修了 | 同じ |
| FP分野に係る大学・大学院での継続的な教育活動 | 従事していた期間(上限2年) |
| 協会が定める大学院の修了 | 在籍期間(上限2年) |
研修1時間が1か月に換算されるので、36時間で36か月=3年です。協会のQ&Aにも「実務経験がまったくない場合 研修1時間=1ヵ月なので、研修36時間=36ヵ月=3年の実務経験として申請できます」という例が載っています。実務経験が1年足りない人が、研修12時間で埋める、という組み合わせもできます。
コースの選び方に、注意が要ります。 協会の「プロフェッショナルFP研修」には、15講座を約半年かけて行う「FP実務家養成コース」、「3日間コース」、「1日コース」の3つがあります。このうち「1日コース」だけは、みなし実務経験の対象になりません。
ほかにも気をつける点が2つあります。研修の一部分だけの出席では認められないこと。そして費用は認定教育機関ごとに異なることです。金額は協会の公開ページには書かれていないので、Myページの案内で確かめることになります。
これらの研修は、ロールプレイングなどの模擬実務が中心のため、主に集合・対面で行われています。
申請は、Myページから出します
手続きの流れは、全6課目合格 → エントリー研修 → 実務経験の申請 → 資格登録の申請、という順です。申請はいずれも協会のMyページから行います。
申請してみて分かったことを3つ書いておきます。
証明書類は、原則として要りません。 協会のページに「原則として証明書類は不要ですが、内容を証明する書類の提出をお願いする場合があります」とあります。私の場合は求められませんでした。
事前に「これは該当しますか」と聞くことはできません。 「実務経験は申請をいただいてから審査いたしますので、審査内容に関する事前のお問い合わせにつきましては回答できません」と明記されています。判断は出してみるまで分かりません。
実務経験の審査を待っているあいだも、資格登録の申請は出せます。 協会の手続きページに「実務経験申請が『申請中』でも申請できます」と書かれています。
待つ人が気をつける、2つの期限
実務経験が足りず、年数がたまるのを待つ人もいます。ここで気をつける点が2つあります。
課目合格の記録は、AFPの資格を保ち続けているあいだだけ有効です。協会のQ&Aには「CFP課目合格歴はAFP認定者として資格を保持していれば期限なく有効です。ただし、AFP資格更新ができず一般会員に移行した場合や協会を退会した場合の課目合格歴は失効となります」とあります。AFPの更新を止めると、6課目そろえた実績が消えます。
いまはCFP資格の登録に期限がありませんが、2028年4月から「全6課目を合格した日から5年以内」という期限が設けられます。これも協会が予告しているものです。合格してから実務経験をためる、という進め方には、これから時間の制限がつきます。
あわせて、資格を取ったあとの更新も2年ごとにあります。CFPは継続教育で30単位以上・3課目以上(「FP実務と倫理」を2単位以上含む)。この「FP実務と倫理」は、2028年4月1日以降に始まる継続教育期間から3単位に変わります。
まとめ
CFPの実務経験について、公式に書かれていることをまとめます。
- 要件は「FP実務の6ステップのいずれか」+「顧客がいること」の2つ。業種・職種・雇用形態で決まるものではない
- 対価が有料かどうかは問われない。ボランティアも対象になる(ただし親族に対するものは除く)
- 公式の該当例に、医療・福祉・介護、一般事業会社の福利厚生、官公庁の相談窓口、学校の金融教育などが並んでいる
- 数えるのは、全6課目合格日の10年前から認定日までの通算3年(2028年4月から起点が変わる)
- 足りなければ、みなし実務研修などで1時間=1か月として換算できる(36時間=3年)
- 審査は個別。事前の問い合わせには答えてもらえない
私が出したのは、医療機関で患者さんに制度の説明をしていた経験でした。金融の仕事ではありませんし、相談料をいただいていたわけでもありません。それでも一発で認められました。同じように「自分は金融ではないから」と手前で止まっている人が、この一覧を一度開いてみる価値はあると思っています。

