収入は3分の2になりました
おそらくみなさんがいちばん気になるところだと思います。転職して、収入はおよそ3分の2になりました。
一方で、収入に関しては、このように変わりました。
- 当直の回数や時間外による変動がなくなった
- 定期昇給があるので、転職した年がいちばん低い年収になる見込み
- 退職金がある
数字だけを並べれば「3分の2に減った」です。けれど中身を見ると、単純に減っただけ、ではありませんでした。
減ったのは「変動する部分」
病院にいたころ、収入は月によってかなり違いました。当直に何回入ったか、時間外がどれだけあったか。そこで大きく上下していたからです。医者の世界では珍しくないと思いますが、当直手当と時間外の賃金が月の給与の半分を超えていることが大半でした。
転職して、当直がなくなり、時間外もほとんどないので、上乗せの部分はほとんどなくなりました。
家計の側から見ると、こうなります。
- 収入の上限は下がった(当直が重なった月の大きく増えることがなくなった)
- 収入の下限は上がった(当直の少ない月に落ち込むこともなくなった)
毎月ほぼ同じ額が入ってきます。金額そのものは減りましたが、ばらつきが消えました。
収入が一定になって、はじめてライフプラン表が作れるようになりました
ライフプラン表というのは、これから何十年ぶんの収入と支出を1年ずつ並べて、家計がどう変わっていくかを見る表です。FPの仕事でいちばん基本になる道具で、住宅・教育・老後のお金は、たいていこの表の上で考えます。
この表は、将来の収入が読めないと作れません。
病院にいたころは、そこが読めませんでした。当直の回数は年によって変わりますし、時間外も職場の事情で動きます。変動が大きくて年収が定まらず、表を埋めることができませんでした。
転職して、ここが変わりました。毎月の支給額がほぼ同じで、定期昇給の幅もおおよそ読めます。収入は3分の2になりましたが、そのかわりに30年先まで表にできるようになりました。家計にとっては、金額が減ったことよりも、読めるようになったことのほうが大きい変化でした。
年収が下がる転職を考えるときに見るとよいのは、下がった額そのものよりも、減ったのが時間外などで増えていた分なのかどうか、というところです。私の場合は、時間外がほとんどない状態での、この年収ですので、働いた時間で割った時間単価で考えると、良い転職ができたと思っています。額面の増減だけでなく、時間や労働内容に対する対価も、あわせて考えてみるのがよいと思っています。
時間と休日は、こう変わりました
お金から少し離れますが、変わったのは収入だけではありませんでした。
- 時間外はほぼなし
- 夜、携帯に職場からの着信がない
- 暦通りの休日
- 休みに職場へ行く必要がない
- 有給休暇が使いやすい
病院にいたころは、携帯電話を必ず枕元に置き、朝は本当に着信がなかったのかを確かめる毎日でした。いまは精神的に安定して睡眠を取ることができています。
大型連休は救急外来の当番で憂鬱だった日々から脱出して、休日に子どもと出かける予定が立てられるようになりました。一方で、連休をどのように過ごせばよいのか分からず、転職してしばらくは戸惑いました。
昼食も変わりました。毎日食べられます。それも会社の外で。毎日外に出ることができるという、それだけで幸せを感じています。
産業医の側から一言だけ書き添えておくと、十分な睡眠と休息をとることは、健康に働き続けるための土台です。健康は資産ですので、長い目で見れば家計にも返ってきます。
ストレスは減りました
以前とくらべると、ストレスはかなり減りました。ここまで心穏やかに日々を過ごせるようになるとは思っていませんでした。
転職で収入が変わるとき、見落としやすいお金
この先は、私の話ではなくFPとしての話になります。転職で変わるお金は、毎月の給与だけではありません。数字はすべて2026年8月時点のものです。
住民税は前年の所得に応じてかかり、給与から引かれる分は6月から翌年5月までの12回に分けて徴収されます。転職して収入が下がっても、その年に払う住民税は、収入が高かった年の所得で決まったままです。とくに1月1日から4月30日のあいだに辞めた場合は、残りがまとめて徴収されるのが原則です(地方税法第321条の5第2項)。
社会保険料はここが逆で、転職した場合は入社時の給与をもとに決まり直します(資格取得時決定)。給与が下がれば、保険料も最初から下がった額になります。ただし転職せず、同じ会社にいながら収入を減らした場合は「随時改定」という手続きが必要になり、当直や時間外が減っただけでは対象になりません。
企業型確定拠出年金(企業型DC)のあった会社を辞めたときは、6か月以内に移す手続きをしないと、資産は国民年金基金連合会へ自動移換されます。そのあいだは運用されず、手数料もかかります。
iDeCo(個人型確定拠出年金)に移したあとも、転職や退職のたびに届け出が必要になります。掛金の上限も、次の勤め先によって変わります。
退職金には退職所得控除があり、勤続年数で決まります。勤続20年を超えたところから、1年あたりの控除額が増えます。受け取るときは「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出してください。控除の計算式や、勤続20年を超えるとどれだけ変わるかは、退職金は、申告書を提出しないと20.42%が引かれますに書きました。
私自身、あとになって差が出るという意味では、この退職金がいちばん大きいかもしれません。病院にいたころは、医局の命令で異動があるので、勤め先が変わるたびに勤続年数がゼロに戻っていました。いまは、たとえ異動があっても勤続年数が積み上がります。毎月の給与だけを見ていると、この違いは見えません。転職を考えるときは、退職金がある会社かどうか。そして、勤続年数がそこから積み上がる形になっているかどうか。この2つも、あわせて見ておくところです。
有給休暇の日数は、その会社に在籍している期間で決まり、日数は会社によって違います。就業規則をよく確認することをおすすめします。
辞めてから次の会社まで間があくなら、健康保険の切り替えも必要になります。任意継続は退職日の翌日から20日以内と期限が短く、過ぎると選べなくなります。
それで、転職して良かったのか
たしかに、収入は大きく減りました。それでも精神的な面、時間的な面で余裕ができて、転職して本当に良かったと思える日々を過ごしています。
転職には勇気が必要です。ただ、転職活動だけなら失うものは少なく、自分の市場価値を知ることができます。
私の場合は、減った3分の1と引き換えに、読める収入と、眠れる夜と、昼に外へ出られる時間が手に入りました。同じ選択が誰にでも当てはまるとは思いませんが、年収の数字だけを見て決めていたら、この形にはならなかったとは思います。
まとめ
| 病院にいたころ | いま | |
|---|---|---|
| 収入 | ― | 3分の2に |
| 収入の形 | 当直・時間外で月ごとに変動 | ほぼ一定・定期昇給あり |
| 退職金 | 異動のたびにリセット | 勤続年数が積み上がる |
| 時間外 | あり | ほぼなし |
| 夜間の連絡 | 携帯を枕元に置いていた | 着信なし |
| 休日 | 大型連休は救急外来の当番 | 暦通り・有給も使いやすい |
| 昼食 | 食べられないかコンビニ弁当 | 毎日食べられる。外食もできる |
| ライフプラン表 | 将来の収入を置けず作れない | 作れる |
働けなくなったときのお金については、このサイトの別の記事に書いています。


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