特養の相部屋なら月およそ11万円が目安。食費と部屋代は介護保険の対象にならず、負担限度額認定で下がる場合があります

ぶどう棚を下から見上げた水彩画。紙の袋をかぶった黒いぶどうの房が奥まで続いている お金と制度
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ここまでの2回は、介護保険が使えるサービスの話でした。最後は、介護保険の対象にならない費用について書きたいと思います。

施設で暮らすときの食費と部屋代がその代表です。あわせて、家に手すりを付ける工事や福祉用具を買うときに、費用の原則9割が介護保険から支給される仕組みも紹介します。毎月のサービスの上限とは別に使うことができます。

今回は、3回に分けて書いてきた介護関連の連載の3回目です。1回目は申請の手続きと待ち時間、2回目は月にいくらかかるかを書きました。情報は2026年9月時点のものです。

介護保険の対象にならない費用があります。食費は8月から1日1,545円になりました

施設で暮らすときの食費と居住費(部屋代)は、介護保険の対象になりません。日用品、おむつ代、施設が独自に上乗せする費用も同様に、かかった額をそのまま支払う必要があります。

施設で払うお金には、介護保険の対象になるもの(介護サービスの費用)と、ならないもの(食費・居住費・日用品やおむつ代・施設が独自に上乗せする費用)があることを示した図

食費の基準になる額は、令和8年8月に1日100円上がって1,545円(月およそ4.7万円)になりました。居住費の基準額は部屋のつくりで変わり、特別養護老人ホームなら、ユニット型の個室が1日2,066円(月およそ6.3万円)、相部屋(多床室)が1日915円(月およそ2.8万円)です。

食費と部屋代が下がる、負担限度額認定があります

世帯全員が市町村民税非課税で、預貯金が一定以下であれば、食費と居住費の負担が下がります。負担限度額認定といいます。

所得のほかに、預貯金の額にも基準があります。第1段階は1,000万円以下(生活保護を受けている方は、預貯金の基準はありません)、第2段階は650万円以下、第3段階①は550万円以下、第3段階②は500万円以下です。夫婦の場合は、それぞれに1,000万円を足した額になります。

段階は、世帯の所得や本人の年金収入などをもとに、市区町村が決めます(利用者負担段階といいます)。認められると、食費の負担は次の額で止まります。

段階1日あたりの食費
第1段階300円
第2段階390円
第3段階①680円
第3段階②1,420円

第3段階の①と②は、この8月に30円と60円上がりました。世帯に市町村民税を課税されている方がいる場合は対象外で、契約で決まった額を全額払います。申請先は市区町村です。

特養・老健・介護医療院・有料老人ホーム・サ高住で、費用の決まり方が違います

施設は名前が似ていますが、役割も費用の決まり方も違います。

特養・老健・介護医療院・有料老人ホーム・サ高住の5つについて、どんな所か、入れる人、介護の費用、食費・部屋代、負担限度額認定が使えるかを比べた表

特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)は、要介護の方が暮らすための生活の場です。平成27年4月から、新しく入所できるのは原則として要介護3以上の方に限られています。要介護1・2の方も、やむを得ない事情で自宅での生活が著しく困難だと認められれば、市区町村の関与のもとで特例的に入所することができます。

介護老人保健施設(老健)は、症状が安定期にあって、在宅に戻るための看護・医学的管理・機能訓練を受ける施設。介護医療院は、長期の療養と医学的管理が必要な方のための施設です。この3つが「介護保険施設」です。負担限度額認定が使えるのは、この3つとショートステイ(短期入所)です。

有料老人ホームは、介護保険では「特定施設入居者生活介護」という在宅サービスの一種です。介護の費用は要介護度ごとの定額で、2回目に書いた区分支給限度基準額(1か月に使える上限)には数えません。介護の部分は介護保険の対象ですが、家賃・食費・管理費は対象にならず、契約で決まります。負担限度額認定の対象にもなりません。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、見守りと生活相談がついた賃貸住宅です。介護が必要になったら、自宅と同じように外から在宅サービスを契約して使うので、2回目に書いた1か月の上限の中で1割(または2割・3割)を払います。家賃・食費・管理費は介護保険の対象にならず、負担限度額認定の対象にもなりません(「特定施設」の指定を受けたサ高住は、有料老人ホームと同じ扱いです)。

厚生労働省が示す目安を挙げます。要介護5の方が特養の相部屋を使った場合、施設サービス費の1割が約26,130円(871単位×30日)、居住費が約27,450円(915円/日)、日常生活費が約10,000円。ここに8月からの食費(1日1,545円、月およそ4.7万円)を足すと、合わせて約11万円です。ただしこの目安には、令和8年6月に介護報酬が上がった分を織り込めていないので、実際にはこれより少し高くなります。

手すりや段差の工事は、20万円まで費用の原則9割が支給されます

家で暮らし続けるための工事には、介護保険から工事費が支給されます。居宅介護住宅改修費といい、補助金ではなく介護保険の給付です。毎月のサービスの上限(区分支給限度基準額)とは別に使うことができます。

上限は20万円(介護保険法第45条、平成12年厚生省告示第35号)。このうち原則9割が保険から出るので、1割負担の方なら自己負担は2万円です。対象になる工事は6種類あります。

  1. 手すりの取付け
  2. 段差の解消
  3. 滑りの防止や移動を楽にするための、床や通路面の材料の変更
  4. 引き戸等への扉の取替え
  5. 洋式便器等への便器の取替え
  6. 上の工事に付帯して必要になる工事

20万円は「1回きり」ではありません。 同じ住宅について生涯20万円までが対象で、20万円に達するまでは、何回かに分けて使うことができます。手すりを先に付けて、あとから段差を直す、という使い方ができます。

20万円がもう一度使えるようになる場合も2つあります。要介護度が3段階以上あがったとき(この取扱いは1回に限られます)と、転居したときです。実家を出て子の家の近くへ移る場合、移った先の住宅で改めて20万円まで使うことができます。

工事の前に、ケアマネジャーに相談してください。 事前の申請が必要で、着工してからでは支給されません。

腰掛便座や入浴補助用具は、1年に10万円まで購入することができます

貸してもらえない種類の福祉用具は、購入する形になります。特定福祉用具購入費といい、同じ年度(4月1日から翌年3月31日まで)に10万円が上限です(介護保険法第44条、介護保険法施行規則第72条)。こちらも原則9割が保険から出ます。

対象は9種目です。腰掛便座、自動排泄処理装置の交換可能部品、排泄予測支援機器、入浴補助用具、簡易浴槽、移動用リフトのつり具の部分、スロープ、歩行器、歩行補助つえ。

このうち固定用スロープ・歩行器・歩行補助つえの一部は、令和6年4月から、借りる形と買う形のどちらかを選ぶ扱い(選択制)になりました。長く使うなら買うほうが安くなることがあります。どちらが得かは使う期間で変わるので、ケアマネジャーか福祉用具の専門相談員に相談してみてください。

気をつけるところが、3つあります

申請しないと、1円も戻りません。 高額介護サービス費も、負担限度額認定も、合算療養費も、自分から申請する仕組みで、期限があります。

(前略)保険給付を受ける権利は、これらを行使することができる時から二年を経過したときは、時効によって消滅する。

介護保険法 第200条第1項

2年です。通知を置いたままにしていると、戻るはずのお金が消えます。休職中の住民税が払えないときに書いた5つの申請と、同じ形です。

医療費控除の対象になる介護サービスがあります。 訪問看護や通所リハビリテーションなどの医療系サービスは対象。訪問介護や通所介護などの福祉系は、同じ月のケアプランに医療系サービスが入っているときに限って対象です(国税庁 No.1127)。施設は、特養などが自己負担額の2分の1、老健と介護医療院は全額が対象となります(同 No.1125)。

介護保険の対象にならない費用は、施設ごとに違います。 食費と居住費の基準額は全国共通ですが、施設が実際にいくらに設定しているかは契約で決まります。見学のときに、月々の請求書の見本を見せてもらってください。

実際の額は、要介護度・地域区分・世帯の所得・部屋のつくりの4つで変わります。この3回に書いたのは、2026年9月時点の全国共通の基準です。いくらになるかは、ケアプランができてはじめて決まります。まずは親の住まいの地域包括支援センターへ、相談してみてください。

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