病気やけがで長く休むことになると、考えることが一度に増えます。給与はいつまで出るのか。休んでいるあいだの保険料はどうなるのか。辞めることになったら、健康保険はどこへ届け出るのか。
このサイトでは、その一つひとつを別の記事に書いてきました。この記事は、それらを時系列に並べ直したものです。制度の中身はそれぞれの記事に書いてありますので、ここではいつまでに、どこへ、何を提出するのかを並べます。
先に、急ぐものから書きます。期限が短いのは、健康保険の任意継続(退職日の翌日から20日以内)と、国民健康保険・国民年金の届出(14日以内)です。この3つは、辞めてから調べ始めると間に合わないことがあります。

退職・休職でする手続きは、12件あります
| 時期 | すること | いつ | 提出先 |
|---|---|---|---|
| 休みに入るとき | 社会保険料の払い方を確かめる | 休みに入る前 | 会社 |
| 休みに入るとき | 傷病手当金の請求 | 休んだ4日目から | 加入している健康保険(会社が記入する欄あり) |
| 休みに入るとき | 限度額適用認定証の申請(マイナ保険証があれば不要) | 治療を受ける月が終わる前に | 加入している健康保険 |
| 休みに入るとき | 住民税の徴収猶予の申請 | 納税通知書が届いたあと、納期限が来る前 | 市区町村 |
| 辞めるとき | 健康保険の任意継続の申出 | 退職日の翌日から20日以内 | 協会けんぽ・健康保険組合 |
| 辞めるとき | 国民健康保険・国民年金の届出 | 退職日の翌日から14日以内 | 市区町村 |
| 辞めるとき | 国民年金保険料の免除・納付猶予の申請 | さかのぼれるのは2年1か月前まで | 年金事務所・市区町村 |
| 辞めるとき | 退職所得の受給に関する申告書の提出 | 退職金を受け取る前に | 会社 |
| 辞めたあと | 失業給付の受給期間の延長 | 働けない日が30日続いた日の翌日から | ハローワーク |
| 辞めたあと | 企業型確定拠出年金の移換 | 資格を失ってから6か月以内 | 運営管理機関(金融機関) |
| 辞めたあと | iDeCoの届け出 | 種別が変わったら、すみやかに | 運営管理機関(金融機関) |
| 翌年 | 医療費控除の確定申告 | 翌年1月1日から5年以内 | 税務署 |
このうち、期限を過ぎると選択できなくなるのは任意継続です。ほかは遅れても手続きそのものはできますが、さかのぼれる範囲が短くなったり、延滞金がついたりします。ただし傷病手当金は、働けなかった日ごとにその翌日から2年で請求できなくなります。
休みに入ると決まったら、まず会社に確かめること
給与が止まっても、社会保険料の請求は止まりません。休職中の分は会社がいったん立て替え、復職した月の給与からまとめて引かれることがあります。標準報酬月額30万円の方で、本人負担は月におよそ4万3千円。半年休むと25万8千円ほどになります。
払い方は会社によって違います。毎月振り込む形か、賞与から精算する形か、復職後の給与から引く形か。どれになるかは就業規則と労使協定で決まっていますので、休みに入る前に確認しておいてください。詳しくは休職中の社会保険料は会社が立て替えます。復職した月の給与が、ほとんど残らないことがありますに書きました。
受け取れるお金は、傷病手当金から始まります
連続する3日間を休んだあと、4日目から支給されます。1日あたりの額は、標準報酬月額をもとにした額のおおむね3分の2。支給を始めた日から通算して1年6か月まで受け取れます。
協会けんぽは、給与の締切日ごとに1か月単位で申請することを勧めています。申請書には、会社が記入する欄と主治医が記入する欄があります。協会けんぽの場合、審査を通れば、受け付けてから10営業日以内に振り込まれます。月初に休み始めた方なら、初回の振込までに1か月半から2か月かかることがあります。
この1年6か月が終わっても働けないときには、障害年金があります。初診日から1年6か月たった日が障害認定日です。起点が違うので、同じ「1年6か月」でも時期はずれます。病院にかかってから休み始めるまでに間があいた方は、障害年金の側が先に来ます。傷病手当金が切れてから調べ始めると、次のお金までに間があくことになります。傷病手当金と障害年金。病気で働けなくなったとき、「1年6か月」は2回ありますで、2つの「1年6か月」の重なり方を書いています。
医療費は、支払う前に上限を決めておくことができます
高額療養費には、あとから払い戻してもらう使い方と、はじめから窓口の支払いを自己負担限度額までにとどめる使い方があります。はじめからとどめるには、マイナ保険証か限度額適用認定証が必要になります。
2026年8月から、ひと月の上限額が変わりました。年収およそ370万円から770万円の方は「85,800円+(その月の総医療費-286,000円)×1%」です。同じ区分の方の年間の上限は、8月から翌年7月までで数えて53万円になります。高額療養費に年間上限ができました。8月から翌年7月で数えて、53万円で止まりますに、所得区分ごとの額を書きました。
翌年の確定申告では、医療費控除があります。ここで気をつけるところは、高額療養費で戻ってきた分の引き方です。医療費控除では、高額療養費で戻った分を、その治療の医療費からだけ除きますに、まとめて引いてしまう誤りの例を書いています。

払い続けるお金には、待ってもらう申請があります
住民税は前の年の所得で決まるので、収入が止まった年にも、そのまま請求が来ます。地方税法第15条の徴収猶予は、本人や生計をともにする家族の病気・けがを理由に、1年以内(延長して通算2年まで)待ってもらえる仕組みです。猶予された期間の延滞金は全額免除になります。猶予の対象になるのは、納税通知書で税額が決まった分です。通知書が届いていない分は、まだ申請できません。納期限を過ぎて滞納になると別の仕組みに変わりますので、通知書を受け取ったら、納期限が来る前に市区町村へ相談してください。
会社を辞めて国民年金に移った方には、保険料の免除と納付猶予があります。令和8年度の保険料は月17,920円。退職を理由とする特例免除なら、本人の前年所得をゼロとみなして審査してもらえます。ただし世帯主と配偶者の前年所得は審査されますので、必ず通るとは限りません。さかのぼって申請できるのは2年1か月前までです。休職中の住民税が払えないときは、1年待ってもらえます。出ていくお金を減らす5つの申請に、国民健康保険の減免と住宅ローンの条件変更も並べています。
辞めるときの期限は、20日と14日です
退職後の健康保険は、任意継続・国民健康保険・家族の扶養の3つから選びます。任意継続の申出は退職日の翌日から20日以内で、この日を過ぎると選択できなくなります。国民健康保険の届出は、退職日の翌日から14日以内です。国民年金の届出も同じ期限で、どちらも市区町村の同じ窓口で一度に手続きできます。家族の扶養に入るときは、ご家族の勤務先を通して届け出ます。この手続きは、ご自身ではなくご家族の会社が窓口になります。退職後の健康保険の切り替え。20日で選択肢がひとつ消えますに、必要な書類と、扶養に入れる条件を書きました。
どちらが安いかは、辞めた理由で変わります。会社都合や、病気など正当な理由のある自己都合の退職なら、国民健康保険は前年の給与所得を3割とみなして計算されるためです。大阪市の例では、任意継続が年およそ37万3千円、国民健康保険が年およそ12万5千円で、差は年25万円ほどになります。会社都合で退職したら、国民健康保険は前年の給与所得を3割とみなします。任意継続との差は年25万円に、両方の計算を並べました。
傷病手当金は、退職日までに続けて1年以上加入していて、退職する時点で受けているか受けられる状態で、退職日に出勤していなければ、辞めた後も、継続して受け取ることができます。
退職金を受け取るときには、会社へ「退職所得の受給に関する申告書」を提出します。提出しないまま支払われると、退職金の額に20.42%をかけた所得税と復興特別所得税が源泉徴収されます(あとから確定申告で精算できます)。退職金は、申告書を提出しないと20.42%が引かれます。勤続20年で手取りも変わりますに、勤続年数で控除がどう変わるかを書きました。
辞めたあとにも、期限のある手続きが続きます
失業給付を受け取れる期間は、原則として辞めた日の翌日から1年です。病気で働けないあいだは受け取れませんが、最長3年ずらすことができ、もとの1年と合わせて4年まで延ばせます。申請できるのは、働けない日が引き続き30日以上になった日の翌日から。傷病手当金と失業給付を同時に受け取ることはできませんので、順番に使うことになります。傷病手当金と失業給付は、同時には受け取れません。受給期間は4年まで延長でき、順番に使いますに、申請の時期を書いています。
年金の側にも期限があります。企業型確定拠出年金は、資格を失ってから6か月以内に移す手続きをしないと自動移換されます。iDeCoは、被保険者の種別が変わると届け出が必要になります。提出先は市区町村ではなく、申し込んだ運営管理機関(金融機関)です。転職・退職をすると、iDeCoは届け出が必要になりますに、届書の種類を書きました。
なお、休む理由が家族の介護のときは、別の仕組みになります。介護休業には社会保険料の免除がありません。育児休業と同じだと思っていませんか。介護休業に社会保険料の免除はありませんをお読みください。
相談先は、手続きごとに違います

同じ「退職のときのお金」でも、提出先は分かれています。社会保険料の払い方と傷病手当金の証明、退職所得の受給に関する申告書は会社、限度額適用認定証は加入している健康保険、任意継続は協会けんぽか健康保険組合です。国民健康保険と国民年金と住民税は市区町村、保険料の免除は年金事務所か市区町村、失業給付はハローワーク、確定拠出年金は運営管理機関(金融機関)、医療費控除は税務署です。
どこから手をつければよいか分からないときは、通院している病院に医療ソーシャルワーカーがいれば、まとめて相談できます。制度の説明だけでなく、書類の書き方や窓口の場所まで教えてもらえます。
体調が悪いときに、12件のすべてに対応するのは難しいと思います。やらないといけないことのリストは頭に入れつつ、会社の窓口がどこかを確認する。代理で手続きができるものがないかを確認する。この2つから始めると、整理がつきやすいのではないかと考えています。
この記事で確認したこと(出どころ)
期限と金額は、2026年9月12日に次の公式ページで確かめました。制度の中身は、それぞれの記事に書いた出どころをご覧ください。
- 全国健康保険協会「傷病手当金」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html
- 全国健康保険協会「よくあるご質問(病気やケガで会社を休んだとき)」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r307/
- 全国健康保険協会「任意継続」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3270/
- 全国健康保険協会「限度額適用認定証」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/high_cost_medical_expenses/001/index.html
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html
- 厚生労働省「患者負担割合及び高額療養費自己負担限度額(令和8年8月〜令和9年7月)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001726232.pdf
- e-Gov法令検索「国民健康保険法施行規則」(第3条) https://laws.e-gov.go.jp/law/333M50000100053
- e-Gov法令検索「地方税法」(第15条) https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html
- 兵庫労働局「受給期間の延長手続き」 https://jsite.mhlw.go.jp/hyogo-roudoukyoku/roudoukyoku/_105009/_111627_00165.html
- 日本年金機構「国民年金保険料」 https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/hokenryo/hokenryo.html
- 日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」 https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20150428.html
- 日本年金機構「国民年金に加入するための手続き」 https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/kanyu/20140710-04.html
- 厚生労働省「年金資産の持ち運び(ポータビリティ)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/portability.html
- 国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm
- 国税庁「No.2732 退職手当等に対する源泉徴収」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2732.htm
- 国税庁「No.2030 還付申告」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2030.htm
- 厚生労働省「Q&A〜介護休業給付〜」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158665.html

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