退職後の健康保険の切り替え。20日で選択肢がひとつ消えます

一面の菜の花畑の向こうに山並みが連なり、雲の多い青空が広がる水彩画 お金と制度
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退職して次の会社まで間があくとき、健康保険の切り替えが要ります。切り替え先は3つあり、そのうち任意継続だけは退職日の翌日から20日以内という短い期限がついています。国民健康保険の届出は14日以内です。

どれを選ぶかで毎月の保険料は数万円ちがい、しかも、どちらが安いかは人によって逆になります。順番に見ていきます。

退職後の健康保険は、切り替え先が3つあります

会社の健康保険は、退職した日の翌日に資格がなくなります。次の会社にすぐ入るなら勤務先が手続きをしてくれますが、間があくときは自分で選んで届け出ます。

  1. 任意継続 それまでの会社の健康保険を、自分で続ける
  2. 国民健康保険 住んでいる市区町村の保険に入る
  3. 家族の扶養に入る 配偶者や親の健康保険に入れてもらう

日本はどこかの健康保険に必ず入る仕組みなので、「何もしない」という選択肢はありません。

手続きはいつまで? 任意継続は20日以内、国民健康保険は14日以内

  • 任意継続:退職日の翌日から20日以内
  • 国民健康保険:資格がなくなった日から14日以内
  • 家族の扶養:家族の勤務先を通して、すみやかに

20日を過ぎると、任意継続は原則として選べません。あとから「そっちの方が安かった」と分かっても、戻ることはできません。比べ終わる前に期限が来てしまうのが、この手続きのやっかいなところです。

任意継続にはもうひとつ、退職日までにその健康保険へ続けて2か月以上入っていたことという条件があります。入社してまもなく辞めた方は使えません。

辞めると決まった時点で、在職しているうちに調べておくのがいちばんです。

退職後の健康保険は、切り替え先が3つあります

14日を過ぎてしまったら、どうなるのか

国民健康保険は、14日を過ぎても届け出ることができます。ただし、2つのことが起こります。

ひとつめは、保険料をさかのぼって払うことです。資格は届け出た日ではなく、会社の健康保険をやめた日に始まるので、遅れたぶんもまとめて請求されます。さかのぼる期間の上限は市区町村によって違います。

ふたつめは、そのあいだの医療費です。届出が済むまで資格確認書は手元になく、病院の窓口でいったん全額を払うことになります。あとから請求できる仕組み(療養費)はありますが、やむを得ない理由がないと認められないことがあります。遅れたぶんがそのまま自己負担になる、ということです。

任意継続の20日は、もっと厳しいです。法律には「正当な理由があると認めるとき」の例外がありますが、協会けんぽが想定しているのは天災地変などです。うっかり忘れた、では通りません。

14日を過ぎると、時間の流れの中でこうなります

任意継続と国民健康保険、どっちが安いか

任意継続では、会社が半分払ってくれていた分がなくなるので、保険料はおおよそ2倍になります。ただし計算に使う金額には上限があるので、給与が高かった方はそこで頭打ちになります。いっぽう国民健康保険は前年の所得で決まるので、収入が止まったあとも、働いていた年の所得で計算された請求が届きます。

つまり、給与が高かった方ほど任意継続が安く、前年の所得が少なかった方は国民健康保険が安いという傾向です。金額を並べた計算は、別の記事にまとめました。

調べ方は、電話だけではありません

  • 任意継続の保険料 協会けんぽの公式サイトに都道府県ごとの「保険料額表」があり、退職時の給与(標準報酬月額)が分かれば自分で計算できます(計算に使う金額の上限は令和8年度も32万円)。健康保険組合の方は組合のホームページを確認するか、在職中に「任意継続にしたら月いくらになりますか」と聞いておくのが確実です
  • 国民健康保険の保険料 自治体によっては公式サイトに試算ツールがあり、前年の所得を入れると目安が出ます。用意がない市区町村は、窓口に電話すると計算してくれます

マイナポータルでは資格の情報は確認できますが、保険料の金額までは分かりません。健康保険組合の任意継続は組合ごとの計算になります。必ず両方の数字を出して比べてください。

家族の扶養に入れる条件

3つ目の道は、家族の健康保険に入れてもらうことです。これがいちばん安く、保険料はかかりません。入れる見込みがあるなら、まずここを確かめてください。条件は大きく2つです。

  • 年間収入が130万円未満であること。60歳以上の方や、障害厚生年金を受けられる程度の障害がある方は180万円未満。19歳以上23歳未満の子など(配偶者は除く)は150万円未満です(2025年10月1日から)
  • 同居しているなら、その収入が家族本人の年間収入の2分の1未満。別居なら、仕送りの額より少ないこと

ここでいう年間収入は、去年いくら稼いだか、ではありません。日本年金機構は「過去の収入のことではなく、被扶養者に該当する時点および認定された日以降の年間の見込み収入額」と説明しています。前年の収入が高くても、退職して収入が止まったのなら入れることがあります。

ただし、失業給付を受けはじめると外れることがあります。日本年金機構は、日額3,611円以下なら要件を満たし、基本手当が3,612円以上になったら扶養から外す届出が要る、としています。

手続きに必要な書類(健康保険資格喪失証明書はどこでもらうか)

任意継続は、「健康保険任意継続被保険者資格取得申出書」を、住んでいる都道府県の協会けんぽ支部へ出します(健康保険組合の方はその組合へ)。退職日が分かる書類の添付は任意です。書類を待って20日を過ぎてしまわないよう、まず出してください。

国民健康保険は市区町村の窓口です。要るのは、健康保険資格喪失証明書(加入する人全員分)、本人確認ができるものマイナンバーが分かるものの3つ。気をつけたいのは、離職票では受け付けない市区町村があることです。離職票の日付は雇用保険のもので、健康保険の日付ではないからです。

その資格喪失証明書は、まず勤務先(または加入していた健康保険)に頼みます。協会けんぽは保険料の給付を、加入や資格の手続きは日本年金機構(年金事務所・事務センター)を担当しています。勤務先から出してもらえないときは、年金事務所か事務センターに「健康保険・厚生年金保険 資格取得・資格喪失等確認請求書(通知書)」を出せば発行してもらえます。

家族の扶養は、ご自身では手続きできません。家族の勤務先を通して届け出ます。

退職のとき、保険証は返すのか ── 資格確認書とマイナ保険証

ここが、この数年でいちばん変わったところです。

健康保険証は、2024年12月2日から新しく発行されなくなりました。手元にあった保険証も2025年12月1日で有効期限が切れ、期限切れでも使えることにする取り扱いも2026年7月31日で終わりました。いま病院の窓口で出すのは、マイナ保険証か資格確認書のどちらかです。

マイナ保険証をお使いの方には「資格情報のお知らせ」という紙が交付されます(2024年9月ごろ、勤務先を通じて一斉に配られました。それより後に入社・転職した方には、加入の手続きのたびに交付されます)。単独では使えず、カードが読み取れなかったときに一緒に出すためのものです。お持ちでない方には「資格確認書」が、申請なしで無料で届きます。手元にない場合は、協会けんぽに再交付を申請するか、マイナポータルの「わたしの情報」から確認・保存できます。

退職のときに返すのは、有効期限内の資格確認書です。ご本人の分だけでなく、扶養に入っているご家族の分もまとめて勤務先へ返還します。マイナ保険証をお使いで資格確認書をお持ちでない方は、そもそも対象になるものがありません。古い健康保険証と、資格情報のお知らせと、期限切れの資格確認書は、ご自分で処分してかまいません。資格確認書が使えるのは退職日までで、翌日以降に使ってしまうと、健康保険が払っていた分(医療費の7〜9割)をあとから請求されます。

そして、マイナ保険証をお使いでも、手続きが要らないわけではありません。厚生労働省は「転職や退職、引越し等に伴う再度の登録は必要ありません。ただし、従来どおり、新たに加入した保険者への異動届等の手続は必要です」としています。加入の手続きをして、その保険者が資格の情報を登録して、はじめてカードが使えます。その登録には「一定の期間を要します」とも書かれています。切り替えた直後に病院にかかる予定があるなら、手続きの控えを持っていってください。

退職のとき、何を返して、何が届くのか

見落とされがちな2つ(付加給付と、扶養家族の人数)

ひとつめは付加給付です。健康保険組合には、医療費の自己負担がひと月2〜3万円で止まる上乗せの給付があることがあります。国民健康保険にはこの仕組みがありません。医療費がかかる時期なら、保険料の差だけでは決められません。

ふたつめは扶養家族の人数です。任意継続なら家族の分の保険料はかかりませんが、国民健康保険は加入した人数の分だけかかります。

産業医として、ひとつだけ

体調を崩して辞めた方ほど、この手続きが後回しになります。動く気力が出ないときに、20日や14日という期限は短すぎます。医療にかかれる状態が途切れると、あとから公的な給付を受けようとしたときに、この空白が響くことがあります。

辞めることが決まったら、体調が落ちきる前に手続きだけ先に済ませてしまう。あるいは、ご家族に頼んで一緒に窓口へ行ってもらう。それだけで防げます。

まとめ

  • 退職後の健康保険は、任意継続・国民健康保険・家族の扶養の3つから選ぶ
  • 任意継続は20日を過ぎると、原則として選べなくなる
  • 国民健康保険は14日を過ぎても届け出られるが、保険料はさかのぼり、そのあいだの医療費は自己負担になることがある
  • 家族の扶養に入れるなら、そこがいちばん安い。年間収入は「去年の額」ではなく「これからの見込み」で見る
  • 退職のときに返すのは有効期限内の資格確認書。マイナ保険証をお使いでも、加入の手続きそのものは要る

制度の細かいところは、加入している健康保険や住んでいる自治体によって違います。実際の金額や書類は、ご自身の窓口でご確認ください。

退職のときに必要な届け出は、健康保険だけではありません。iDeCo(個人型確定拠出年金)をお持ちの場合は、iDeCoの届け出も必要になります。

退職金を受け取る予定があるときは、申告書を1枚出したかどうかで手取りが変わります

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