傷病手当金と失業給付は、同時には受け取れません。受給期間は4年まで延長でき、順番に使います

お金と制度
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病気やけがで働けなくなり、そのまま会社を辞めることになった。このとき、多くの方が「次は失業給付だ」と考えます。ところが、ここで手続きをしても、お金は出ません。失業給付は働ける状態にある人へのお金で、療養中の方はこの条件を満たさないからです。

そして、放っておくと期限だけが過ぎていきます。失業給付を受け取れる期間は、原則として辞めた日の翌日から1年。1年半療養してから窓口に行っても、受け取れずに終わってしまいます。これを防ぐのが受給期間の延長、つまり「受け取れる期限を延ばしておく」手続きです。1年の期限を、最長で4年まで延ばすことができます。今回は、その手続きと、傷病手当金との順番、そして名前が1字違いで紛らわしい「傷病手当」の話です。

病気で働けないあいだは、失業給付を受け取れません

失業給付は、働きたい気持ちと、働ける体の両方がある人に出るお金です。雇用保険の法律にも、そう書かれています。療養中の方は、後ろの「働ける体」のほうを欠くと判断されます。ハローワークのページにも「病気やけがのため、すぐには就職できないとき」は受け取れないと書いてあります。

受け取れる期限の1年を、最長4年まで延ばせます

失業給付を受け取れる期限は、原則として辞めた日の翌日から1年です。この1年のあいだに、病気やけがで引き続き30日以上働けなくなったときは、その日数だけ期限を後ろへずらせます。ずらせるのは最長で3年、もとの1年と合わせて4年までです。

対象になる理由は、病気・けがのほかに、妊娠、出産、育児(3歳未満)、親族の介護です。

失業給付を受け取れる期限は原則1年で、働けなかった日数のぶんだけ、合わせて最長4年まで延ばせることを表した帯の図

申請は、働けない日が30日続いた翌日から

ここが手続きのいちばん大事なところです。離職した翌日にハローワークへ行っても、延長の申請はできません。引き続き30日以上職業に就くことができなくなった、という事実が先に要るからです。病気のまま会社を辞めた方なら、辞めた日の翌日から数えて30日を過ぎてからハローワークへ行く、という順番になります。

「いつまでに」という締切そのものはありません。ただし、遅れれば遅れるほど、受け取れる分は減っていきます。4年という上限が動かないからです。たとえば2年たってから申請して、受け取れる期限の残りが2か月しかなければ、本来90日ぶん(およそ3か月)受け取れる方でも、2か月ぶんで終わります。厚生労働省も、申請が遅いと全部は受け取れないことがある、と注意しています。締切がないのであって、急がなくてよいのではありません。

なお、もとの1年が過ぎたあとでも、申請はできます。大事なのは、その1年のあいだに「引き続き30日以上働けない状態」になっていたかどうかです。1年が過ぎてから病気になった、という場合は延ばせません。

提出するものは、受給期間延長申請書、離職票、身元確認書類、延長の理由を証明する書類です。ご本人が行けないときは、代理の方に頼むことも、郵送することもできます。

傷病手当金と失業給付は、順番に使います

傷病手当金と失業給付を、同時に受け取ることはできません。健康保険の傷病手当金は「働けないこと」を条件にしたお金、雇用保険の失業給付は「働けること」を条件にしたお金だからです。ひとりの人が、同じ日について両方の条件を満たすことはありません。

順番はこうなります。①退職する →②傷病手当金を受ける(傷病手当金と障害年金。病気で働けなくなったとき、「1年6か月」は2回あります)→③並行して、雇用保険に「受給期間の延長」を申請しておく →④体調が戻る →⑤求職の申込みをして、失業給付を受ける。

退職から失業給付までの順番の図。1退職する、2療養中に健康保険の傷病手当金、4体調が戻る、5求職の申込みをして失業給付。3の受給期間の延長は2と同じころに並行して申請する

なお、④から⑤へ移るときに、ハローワークから医師の証明を求められることがあります。一般の診断書ではなく、ハローワークが用意した様式に医師が「いつから働ける状態か」を書き込むものです。様式の名前は労働局によって違います(静岡労働局では「就労可能証明書」という名前です)。窓口でもらえるので、次の受診のときに持って行ってください。

③を②と同じ時期にやっておくのが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。延長の申請は「いま失業給付をください」ではなく「期限を止めておいてください」という手続きです。ですから、傷病手当金を受け取りながらでも申請することができます。

なお、退職したあとも傷病手当金を受け取れるのは、退職日までに健康保険に続けて1年以上入っていて、退職日に出勤していない場合です(退職後の健康保険の切り替え。20日で選択肢がひとつ消えます)。

傷病手当金の請求先は健康保険、延長の申請先はハローワークです。どちらも、ご自身で手続きをする必要があります。そして、延長を申請したあと、体調が戻ったからといって失業給付がひとりでに始まるわけではありません。ご自分でハローワークへ行って求職の申込みをしたときから、失業給付が始まります。

なお、失業給付は退職前の給与をもとに計算しますが、1日あたりの上限があります。年齢によって7,450円から9,110円です(令和8年8月1日現在。毎年8月1日に見直されます)。給与が高かった方ほど、退職前との差は大きくなります。

「傷病手当金」と「傷病手当」は、1字違いの別の制度です

「金」が付くかどうかで、まったく別の制度になります。

健康保険の 傷病手当雇用保険の 傷病手当
請求する先協会けんぽ・健康保険組合ハローワーク
いつの話か在職中や退職後の療養中求職の申込みをしたあとに病気になったとき

雇用保険の傷病手当は、ハローワークで求職の申込みをしたあとに病気になった方への給付です。15日以上働けなくなったときに、ご自分でハローワークに申請して切り替えます。自動では切り替わりません。金額は失業給付と同じなので、受け取る額は変わりません。健康保険の傷病手当金を受けられる方は、こちらの対象になりませんので、両方をもらうことはできません。

病気でやめた方は、特定理由離職者に該当することがあります

病気やけがで働き続けられなくなって辞めた場合、形のうえでは自己都合の退職ですが、特定理由離職者として扱われることがあります。ハローワークの一覧に「体力の不足、心身の障害、疾病、負傷……により離職した者」と書かれています。

該当すると、自己都合で辞めた方が待たされる期間(2025年4月以降に辞めた場合は原則1か月)がなく、すぐに受け取り始められます。雇用保険に入っていた期間の条件もゆるくなり、国民健康保険の保険料も安くなります(会社都合で退職したら、国民健康保険は前年の給与所得を3割とみなします)。

ただし、受け取れる日数そのものは増えません。変わるのは日数ではなく、受け取り始める時期です。待たされずに、すぐ始められます。

該当するかどうかは、会社からもらう離職票に書かれた番号で決まります。実際と違うと感じたときは、離職票に本人が意見を書く欄がありますので、署名する前に読んでください。

延長しないまま1年が過ぎると、受け取れずに終わります

退職して療養に入ると、やることが一度に増えます。健康保険の切り替えに20日、国民年金の免除申請、住民税の相談(休職中の住民税が払えないときは、1年待ってもらえます)。そのなかで雇用保険は「まだ働けないから、あとで」と置かれがちです。90日ぶん残っていても、1年が過ぎれば0日になります。しかも30日を過ぎないと申請できないので、退職の当日には片づけられません。離職票が届いたら「30日後」と書き込んでおくくらいでちょうどよいと思います。

延長を申請した場合は回復してから失業給付を受け取れ、申請しなかった場合は日数が残っていても受け取れずに終わることを比べた図

まとめ

  • 失業給付を受け取れる期限は原則1年。引き続き30日以上働けないときは、その日数だけ延ばすことができます。上限は4年。申請は30日続いた日の翌日から。ご本人が行けないときは、代理の方に頼むことも、郵送することもできます
  • 傷病手当金と失業給付は同時には受け取れません。傷病手当金 → 回復 → ハローワークで求職の申込み → 失業給付、の順番です
  • 病気・けがによる退職は特定理由離職者にあたることがあり、待たされずに受け取り始められます。ただし受け取れる日数は増えません
  • 延長を申請しないまま1年が過ぎると、日数が残っていても受け取れずに終わります

実際の判断は、離職の理由やご自身の状況で変わります。住所を管轄するハローワークで相談してみてください。

退職・休職とお金の記事

この記事は、退職や休職のときのお金をまとめた7本のうちの1本です。あわせてどうぞ。

この記事で確認したこと(出どころ)

  • ハローワークインターネットサービス「基本手当について」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html (基本手当日額の上限額=令和8年8月1日現在。2026-09-03に再取得して確認
  • ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_procedure.html
  • ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_range.html
  • ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_benefitdays.html
  • 厚生労働省「平成29年4月1日から、雇用保険の基本手当について受給期間延長の申請期限を変更します」(リーフレット) https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000163256.pdf
  • 岩手労働局・ハローワーク「令和7年4月1日以降に離職された方は『給付制限期間』が1か月に短縮されます」(リーフレット) https://jsite.mhlw.go.jp/iwate-roudoukyoku/content/contents/002176733.pdf
  • 厚生労働省 職業安定分科会雇用保険部会(第197回)資料1「令和6年雇用保険制度改正(令和7年4月1日施行分)について」 https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001293213.pdf
  • 兵庫労働局「受給期間の延長申請について」 https://jsite.mhlw.go.jp/hyogo-roudoukyoku/roudoukyoku/_105009/_111627_00165.html
  • 大阪労働局「受給期間の延長」 https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/koyou_hoken/hourei_seido/situgyo/minasama/entyo.html
  • e-Gov法令検索「雇用保険法」(昭和四十九年法律第百十六号)第4条・第20条・第21条・第33条・第37条 https://laws.e-gov.go.jp/law/349AC0000000116
  • 名古屋市「会社都合等で退職した人を対象とした国民健康保険料軽減制度」 https://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/page/0000007754.html

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