家族に介護が必要になった。親が転んで骨を折った、配偶者が入院した。会社を長く休むことになるのは、自分が病気になったときだけではありません。たいてい、何の準備もないところから決めることになります。
このサイトでは「自分が休むとき」のお金を書いてきました(傷病手当金と障害年金)。今回は、家族のために休むときの話です。家族の介護のために使える休みは2種類ありますが、給付金が出るのは介護休業だけです。そして育児休業とは違って、社会保険料は免除されません。

介護休暇と介護休業は、名前が似ているだけの別の制度です
| 介護休暇 | 介護休業 | |
|---|---|---|
| 日数 | 1年度に5日(対象家族が2人以上なら10日) | 対象家族1人につき通算93日 |
| 分け方 | 1日単位、または時間単位 | 3回まで分割できる |
| 申し出 | 当日の電話でも構わない | 開始したい日の2週間前まで |
| お金 | 給付はない(有給か無給かは就業規則しだい) | 雇用保険から介護休業給付金 |
どちらも法律で決まった制度なので、会社の就業規則に書かれていなくても、条件を満たせば請求することができます。ただし、会社に労使協定という取り決めがあると、入社1年未満の方などは介護休業の対象外にできる決まりが残っています。入社して間もない方は、先に会社に確かめてください。これらは、年次有給休暇とは別に与えられます。2025年4月1日から、入社6か月未満の方を介護休暇の対象から外す規定はなくなりました。
使えるのは、2週間以上にわたって常時介護を必要とする状態にある家族を介護するときです。この2週間は家族の状態が続く期間で、休業の長さではありません。要介護2以上なら、それだけで条件を満たします。対象家族は配偶者(事実婚を含む)・父母・子・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫で、同居の有無は問われません。
介護休業は、介護をするための休みではありません
ここは誤解されやすいところです。国の説明でも、こう書かれています。
介護休業は、労働者が自ら介護に専念するために利用することを想定しているものではなく、介護を要する家族を支える体制を構築するために、一定期間利用することを想定した制度です。
厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」69ページ
93日という長さも、そう考えると納得できます。自分で介護を続ける前提なら短すぎますが、要介護認定を申請し、ケアマネジャーと会い、サービスと家族の分担を決める段取りの期間としてなら現実的です。だから3回に分けられます。たとえば、入院の付き添いで2週間、要介護認定とケアプランづくりで3週間、施設に移るときに1か月、といった使い方です。
介護休業給付金は、賃金の67%。上限は月366,222円です

支給額=休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
賃金日額は休業前6か月の賃金を180で割った額です。月給30万円なら日額10,000円で、ひと月あたり201,000円。給付金の上限は月366,222円(令和8年8月1日から。毎年8月に見直されます)。税金はかかりません(雇用保険法第12条)。
条件は3つ。休業開始前2年間に賃金支払基礎日数11日以上の月が通算12か月以上あること、各支給単位期間(休業を始めた日から1か月ごとに区切った期間)の就業が10日以下であること、休業中の賃金が休業前の80%未満であること(13%以下なら満額の67%、それを超えると差額)。有期雇用の方も対象ですが、取る時点で退職が決まっている場合は出ません。
この「10日以下」は休業中に働いた日数の上限で、休業の長さに下限はありません。10日だけの介護休業もできます。
お金が入るのは、休業が終わってからです
給付金は毎月振り込まれません。一回の介護休業ごとに、最大3か月分をまとめて申請します。期限は介護休業終了日の翌日から2か月を経過する日の属する月の末日まで(休業が3か月以上に及んだときは、終了日ではなく「開始日から3か月たった日」の翌日から数えます)。届出先は事業所を管轄するハローワークで、原則として会社を経由します。
つまり、3か月休むと、収入がない状態が3か月続いたあとで、まとめて入ってくることになります。
あわせて3つ。93日は対象家族1人につき一生の上限で、使い切ったあとは、同じ家族について介護休業の制度を使うことはできません。休業中も社会保険料と住民税の支払いは続きます。 申請期限を過ぎると受け取れませんので、「誰が、いつ出すのか」を休業に入る前に人事や総務へ確かめてください。
出ていくお金を軽くする申請は、休職中と同じ仕組みが使えます(休職中の住民税が払えないときの5つの申請)。住民税の徴収猶予は、生計をともにするご家族の病気やけがも条文に書かれた事由です。
社会保険料は、免除されません。ここが育児休業との違いです
育児休業を取ったことがある方は、介護休業も同じだと思われるかもしれません。産前産後休業と育児休業の期間は、健康保険料も厚生年金保険料も、本人負担分も会社負担分も免除され、納めたものとして扱われます。条文に書かれた制度です。免除が条文に書かれているのは産前産後休業と育児休業だけで、介護休業は入っていません。
病気やけがによる休職と、まったく同じ構図です(休職中の社会保険料は会社が立て替えます)。給与がゼロでも保険料は止まらず、天引きできないぶんを会社が立て替えて、あとから請求してきます。40歳から64歳の方は、介護保険料も乗ります。休業に入る前に、保険料を毎月自分で振り込むのか会社の立て替えか、住民税を天引きのままにするかを、会社に確かめてください。
2025年4月から、会社が社員に介護の制度を知らせることが義務になりました
介護に関する育児・介護休業法の改正は、すべて2025年4月1日に施行済みです。
- 申し出た人への個別周知と意向確認(法第21条第4項)。制度と申出先、そして介護休業給付金のことを知らせ、使う意向を確認する義務
- 40歳などの節目での情報提供(法第21条第5項)。本人が何も申し出なくても、会社が知らせる義務
- 雇用環境の整備(法第22条第2項)。研修・相談体制・事例の提供・方針の周知のうち、少なくともひとつ
- テレワークの措置(法第24条第4項)。在宅勤務を選べるようにする努力義務
あなたが動かなくても会社側が動くべきこととして法律に書かれました。逆に言えば、家族に介護が必要になったことを会社に伝えないと始まりません。
使う順番は、介護休暇 → 介護休業 → 勤務時間の短縮等です

介護は、いつ終わるか分かりません。93日を先に使い切ると、あとが続かなくなります。
①介護休暇から。 要介護認定の申請、地域包括支援センターへの相談、通院の付き添い。数時間で済む用事には、時間単位で取れる介護休暇が合います。使い切っても翌年度にまた5日つきます。
②まとまった段取りが要る時期に、介護休業。 入院から退院、施設探し、家族の分担決め。3回に分けられるので、全部を1回で使わないでください。
③日常が回り始めたら、勤務時間の短縮等。 介護休業とは別枠で、対象家族1人につき3年間以上・2回以上使える形にする義務が会社にあります(法第23条第3項)。短時間勤務、フレックスタイム制、時差出勤、介護サービス費用の助成のいずれか。残業の免除や深夜業の制限も請求できます。中小企業も同じです。
そして、退職は最後です。辞めると収入が止まるだけでなく、健康保険も年金も自分で入り直して、保険料を払うことになります(任意継続と国民健康保険の比較)。家族の介護を理由とする自己都合退職は特定理由離職者と扱われることがあり、そこが分かれ目です。辞めたあとでは使えなくなる制度があります。
まとめ
- 介護休暇は年5日(家族2人以上なら10日・時間単位で取れる)、介護休業は対象家族1人につき通算93日で3回まで分割できます
- 給付金は賃金の67%、上限は月366,222円。税金はかかりません
- 支払いは休業が終わってからまとめて。申請期限は終了日(休業が3か月以上のときは開始日から3か月たった日)の翌日から2か月を経過する日の属する月の末日
- 社会保険料は免除されません。 条文に書かれているのは育児休業と産前産後休業だけです
- 2025年4月から、会社には個別周知・意向確認と40歳などでの情報提供の義務があります
- 介護休業は「家族の介護をする休み」ではなく「介護の体制をつくるための休み」。93日を先に使い切らないでください
制度の細かいところは勤務先の就業規則と管轄のハローワークで、介護保険サービスのほうは市区町村か地域包括支援センターで確かめられます。
この記事で確認したこと(出どころ)
- 厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし(令和7年4月1日、10月1日施行対応)」 https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000355354.pdf /改正のポイント(3〜5ページ)、介護休業の期間と趣旨(69ページ)、介護休暇(76〜78ページ)、介護に直面した旨の申出があった場合の措置(104ページ)、40歳等の情報提供(106ページ)、雇用環境の整備(111ページ)、所定労働時間の短縮等の措置(118ページ)、在宅勤務等の努力義務(127ページ)
- 厚生労働省「常時介護を必要とする状態に関する判断基準(令和7年4月1日適用)」 https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/002140717.pdf /12項目、要介護2以上、対象家族の範囲
- 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「令和8年8月1日から支給限度額が変更になります」 https://www.mhlw.go.jp/content/001728499.pdf /介護休業給付金の支給限度額366,222円、休業開始時賃金月額の上限546,600円・下限96,090円
- 厚生労働省「令和8年8月1日からの基本手当日額等の適用について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000160564_00050.html
- 兵庫労働局「雇用保険事務手続きの手引き 第11章 介護休業給付について」 https://jsite.mhlw.go.jp/hyogo-roudoukyoku/content/contents/002415785.pdf /受給資格、支給要件(就業10日以下・賃金80%未満・13%の区分)、支給額の計算式と具体例、申請期限、届出先、Q&A(2週間の意味、93日の再取得)
- e-Gov法令検索「雇用保険法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/349AC0000000116 /第12条(公課の禁止)、第61条の4(介護休業給付金・対象家族・93日・4回目以後)、附則第12条(67%の暫定措置)
- e-Gov法令検索「健康保険法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/大正十一年法律第七十号 /第159条(育児休業等期間中の保険料免除)。介護休業の免除規定がないことを全文検索で確認
- e-Gov法令検索「厚生年金保険法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115 /第81条の2、第81条の2の2。同じく介護休業の免除規定がないことを確認
- e-Gov法令検索「労働基準法」第39条第10項(介護休業期間は出勤したものとみなす)

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