iDeCo(個人型確定拠出年金)は、加入したあとも、会社を辞めたり変わったりするたびに届け出が必要になる制度です。出さないままにしていると、掛金の口座振替が一時停止になることがあります。
会社員のうちは、運用する商品を選ぶほかに、手を動かす場面はあまりありません。ところが辞めた日を境に、届け出はご自身で行うことになります。この記事は、そこを中心に書きます。
iDeCoは、自分で申し込んで、自分で運用する年金です
iDeCoは、公的年金に上乗せする私的年金で、国民年金基金連合会が実施しています。自分で掛金を出し、自分で運用商品を選び、掛金と運用益の合計をもとに給付を受けます。掛金は月5,000円から1,000円単位。原則として60歳になるまで引き出すことはできません。
税制の扱いは3つあります(厚生労働省)。
- 掛金は全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除。所得税法第75条)
- 運用益は非課税。通常の金融商品なら20.315%の源泉分離課税がかかります
- 受け取るときは、年金なら公的年金等控除、一時金なら退職所得控除
ただし、課税される所得がない方は、掛金の所得控除を受けられません(国民年金基金連合会)。
辞めた、変わった。そのたびに届け出が必要になります

就職・転職・退職で公的年金の被保険者種別が変わると、iDeCoの加入区分も変わり、届け出が必要になります(国民年金基金連合会「各種変更届について」)。
iDeCoの加入区分変更の手続きをいただけない場合、掛金の口座振替が一時停止となることもありますので、ご注意ください。
出す相手は、市区町村ではなく、iDeCoを申し込んだ運営管理機関(金融機関)です。
| こうなったとき | 出す書類 |
|---|---|
| 会社員・公務員(第2号被保険者)になった。勤め先の企業年金の加入状況が変わった | 加入者登録情報変更届(第2号用)K-032 |
| 自営業・無職など(第1号被保険者)になった | 加入者被保険者種別変更届(第1号用)K-010A |
| 扶養に入った(第3号被保険者) | 加入者被保険者種別変更届(第3号用)K-010C |
| 国民年金に任意加入した | 加入者被保険者種別変更届(任意加入用)K-010D |
| 転職先の企業型DCへ資産を移す | 加入者資格喪失届 K-015 |
会社員から会社員への転職でも、企業年金の加入状況が変われば届け出が必要になります。表のいちばん上の行です。
公的年金の側の手続きは、これとは別です。退職して第1号被保険者になる方は、退職日の翌日から14日以内に市区町村の国民年金の担当窓口へ(日本年金機構)。扶養に入って第3号被保険者になる方は、配偶者の勤め先を通して行います。
掛金の上限は、勤め先と国民年金の種別で変わります

同じ人でも、辞める前と後で上限が変わります。2026年9月時点です(厚生労働省)。
| 区分 | 月あたりの上限 |
|---|---|
| 第1号被保険者(自営業者等) | 68,000円(国民年金基金の掛金・付加保険料を納めていれば、その分を引いた残り) |
| 第2号被保険者・企業年金等なし | 23,000円 |
| 第2号被保険者・企業年金等あり(企業型DC・確定給付型・公務員) | 20,000円(勤め先が出す掛金と合わせて55,000円の範囲内。会社の掛金が35,000円を超える方は、超えた分だけ減ります) |
| 第3号被保険者(扶養されている配偶者) | 23,000円 |
| 任意加入被保険者 | 68,000円 |
会社員から自営業になれば、上限は23,000円または20,000円から68,000円へ上がります。逆は下がります。上限を超えたままでは拠出できないので、加入区分変更の届け出とあわせて、掛金額変更の届け出も必要になります(国民年金基金連合会)。
2026年12月1日からは、この上限が引き上げられる予定です。第2号加入者は月額6.2万円(勤め先に企業年金がある方は、企業年金の掛金と合わせて6.2万円)、第1号加入者は国民年金基金と合わせて月額7.5万円。同じ日から、60歳以上70歳未満の方も、条件を満たせば加入できるようになる予定です(厚生労働省)。
会社を辞めて国民年金の保険料を免除してもらうと、掛金は出せなくなります
国民年金保険料の納付を免除されている方は、一部免除の方も含めて、iDeCoの加入対象になりません(国民年金基金連合会)。一方で、障害基礎年金を受給されている方など、例外はあります。
iDeCoは公的年金に上乗せする私的年金なので、国民年金の保険料を納めていない期間は掛金を拠出できない決まりです(確定拠出年金法第62条第1項第1号)。加入したあとに免除を受けた場合も、その時点で加入者の資格を失います(同条第4項第4号)。このときも、運営管理機関へ「加入者資格喪失届(K-015)」を提出します。
退職して収入がなくなったとき、国民年金には失業による特例免除があります(休職中の住民税が払えないときは、1年待ってもらえます)。保険料の負担は減りますが、そのあいだiDeCoの掛金を拠出することはできません。
それまで積み立てた資産は残ります。掛金をやめて運用だけを続ける「運用指図者」になり、その期間も、あとで説明する通算加入者等期間に算入されます。
扶養に入る場合、掛金の所得控除は見込めません
配偶者の扶養に入って第3号被保険者になった方も、iDeCoは続けられます。上限は月23,000円です。
ただし、掛金の所得控除は、課税される所得があってはじめて意味を持ちます。課税所得がない方は所得控除を受けられません(国民年金基金連合会)。運用益の非課税と受け取るときの控除は残ります。
前の会社の企業型DCは、6か月以内に移す手続きが必要です
企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入していた方が退職し、6か月以内に移す手続きをしないと、資産は国民年金基金連合会へ自動移換されます。運用は止まり、手数料が引かれます。金額と3つの不利は、転職で収入は3分の2にの第3節に書きました。
iDeCoへ移すときは「個人別管理資産移換依頼書(K-003)」を、掛金も出すなら「個人型年金加入申出書(K-001)」もあわせて、運営管理機関へ提出します。
なお、企業型DCの資格喪失後6か月以内に新たにiDeCoの加入者になったことが確認できた方は、申し出をしなくても移換の処理が行われるようになりました(国民年金基金連合会)。
受け取れるのは60歳から。10年に満たないと、受け取り始める年齢が遅くなります

60歳から受け取るには、60歳になるまでの通算加入者等期間が10年以上必要です。満たない場合は、受給できる年齢が繰り下がります。8年以上10年未満で61歳、6年以上8年未満で62歳と、1歳ずつ遅くなります。1か月以上2年未満なら65歳からになります(国民年金基金連合会)。
受け取り始める時期は、75歳になるまでの間で選べます。受け取り方は、一時金として一括、5年以上20年以下の年金、その組み合わせの3つ。一時金は退職所得控除、年金は公的年金等控除の対象になります。
会社の退職金と同じ年に一時金で受け取ると、退職所得控除を分け合う形になります。この計算は別の記事に書きます。退職所得控除そのものは、勤続年数で決まります(転職で収入は3分の2にの第4節)。
まとめ
- 国民年金の被保険者種別が変わったら、運営管理機関へ届け出を提出します。出さないと、掛金の口座振替が一時停止になることがあります
- 掛金の上限は20,000円・23,000円・68,000円と、勤め先と種別で変わります。加入区分変更とあわせて、掛金額変更の届け出の提出が必要です
- 公的年金の側の手続きは別にあります。第1号になる方は、退職日の翌日から14日以内に市区町村へ届け出る必要があります
- 国民年金保険料の免除を受けているあいだは、iDeCoの掛金を拠出することはできません
- 扶養に入ると、掛金の所得控除は課税所得のある方のものなので見込めません
- 前の会社の企業型DCは、移す手続きの期限が6か月です。iDeCoへ移すなら「個人別管理資産移換依頼書(K-003)」を提出します
- 60歳から受け取るには、通算加入者等期間が10年以上必要です
書類の名前が並びましたが、どれも運営管理機関に連絡すれば取り寄せられます。退職の前後は手続きが重なりますので、退職後の健康保険の切り替えとあわせて、やることを1枚に並べてみてください。
同じ「放っておくと困る口座」の話として、2023年までのNISAもあります(2023年までのNISAは、そのままでは新NISAに入りません)。
退職・休職とお金の記事
この記事は、退職や休職のときのお金をまとめた8本のうちの1本です。あわせてどうぞ。
- 退職後の健康保険の切り替え。20日で選択肢がひとつ消えます
- 傷病手当金と障害年金。病気で働けなくなったとき、「1年6か月」は2回あります
- 高額療養費に年間上限ができました。8月から翌年7月で数えて、53万円で止まります
- 休職中の社会保険料は会社が立て替えます。復職した月の給与が、ほとんど残らないことがあります
- 会社都合で退職したら、国民健康保険は前年の給与所得を3割とみなします。任意継続との差は年25万円
- 休職中の住民税が払えないときは、1年待ってもらえます。出ていくお金を減らす5つの申請
- 傷病手当金と失業給付は、同時には受け取れません。受給期間は4年まで延長でき、順番に使います
この記事で確認したこと(出どころ)
- e-Gov法令検索「確定拠出年金法」第33条第1項(受給開始年齢と通算加入者等期間の表)・第62条第1項第1号/第4項第4号(保険料免除者は加入対象外・資格喪失) https://laws.e-gov.go.jp/law/413AC0000000088
- 国民年金基金連合会「iDeCo(イデコ)の加入資格・掛金・受取方法等」(加入資格/保険料免除者は加入対象外/受給開始年齢と通算加入者等期間/受取方法) https://www.ideco-koushiki.jp/guide/structure.html
- 国民年金基金連合会「iDeCoってなに? iDeCoの特徴」(60歳まで引き出せない/課税所得がない場合は所得控除が受けられない) https://www.ideco-koushiki.jp/guide/
- 国民年金基金連合会「iDeCo加入者で転職・退職された方へ」(種別変更ごとの届書K-032・K-010A・K-010C・K-010D/K-015/K-003/K-001/自動移換と手数料/6か月以内にiDeCo加入者になった方の取り扱い) https://www.ideco-koushiki.jp/retirement/
- 国民年金基金連合会「各種変更届について」(加入区分変更の届け出/出さない場合は口座振替が一時停止/加入区分変更に伴う掛金額の変更) https://www.ideco-koushiki.jp/join/
- 国民年金基金連合会「加入者の方へ 給付について」(通算加入者等期間に応じた受給可能な年齢の表/受取方法/脱退一時金の7要件) https://www.ideco-koushiki.jp/join/benefits.html
- 国民年金基金連合会「iDeCo(イデコ)をはじめるまでの4つのポイント」(月5,000円以上1,000円単位/掛金額の変更は1年に1回) https://www.ideco-koushiki.jp/start/
- 厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」(iDeCoの対象者と拠出限度額/55,000円の範囲/税制上の措置) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/gaiyou.html
- 厚生労働省「2025年の制度改正」(拠出限度額の引き上げと加入可能年齢の引き上げ。いずれも2026年12月1日施行予定) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/2025kaisei.html
- 厚生労働省「2024年12月から、iDeCoの拠出限度額が1.2万円→2万円になります!」(3つの税制優遇/2024年12月以降、個人払込の場合は事業主の証明が不要) https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001252904.pdf
- 国税庁「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」(個人型年金加入者掛金は全額が控除。根拠=所得税法第75条) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1135.htm
- 日本年金機構「会社を退職したときの国民年金の手続き」(第1号または第3号への切り替え) https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/kanyu/20140710-03.html
- 日本年金機構「国民年金に加入するための手続き」(種別が変わったときは14日以内。届出先は市区町村) https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/kanyu/20140710-04.html

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