要介護認定は、申請から結果まで平均39.9日。待つあいだも、申請した日にさかのぼって使えます

青空と白い雲の下、ヨシと緑の中州が広がる河口近くの湿地の水彩画 お金と制度
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親の介護が始まると、決めることが一度に増えます。どこに相談すればいいのか。月にいくらかかるのか。介護保険はどこまで使えるのか。

介護保険は、医療保険とお金の数え方が違います。ひと月に使える量に上限があり、超えた分には保険が使えません。食費や部屋代は、そもそも介護保険の対象ではありません。

この記事は、介護に関わる費用のしくみを3回に分けて書きます。1回目は、どこへ行って何をするか。2回目は、月にいくらかかるか。3回目は、介護保険の対象にならない費用です。数字は2026年9月時点のものです。

介護保険は、介護を家族で抱え込まずに済むようにするための制度です。使えるサービスを組み合わせて、仕事も暮らしも続けられるようにするためのものです。働きながら介護するときの休みの制度(介護休業・介護休暇)は、雇用保険と会社の話です。介護休業に社会保険料の免除はありませんに書きましたので、そちらをご覧ください。

申請は市区町村へ。地域包括支援センターに代わってもらうこともできます

介護保険を使うには、要介護認定の申請をする必要があります。申請先は市区町村の介護保険の窓口になり、直接行って申請することもできます。ただ、何から始めればよいか分からないうちは、先に相談できる場所があります。介護保険法には、申請の手続きを代わってもらえる先が定められています。

当該被保険者は、厚生労働省令で定めるところにより、(中略)第百十五条の四十六第一項に規定する地域包括支援センターに、当該申請に関する手続を代わって行わせることができる。

介護保険法 第27条第1項

地域包括支援センターは、高齢者の保健医療と福祉を包括的に支援する施設です(同法第115条の46)。市町村が設置するもので、すべての市町村にあり、全国に5,487か所。支所にあたるブランチやサブセンターまで数えると7,374か所あります(厚生労働省調べ、令和7年4月末現在)。相談の費用はかかりません。

どのセンターが担当するかは、親の住所で決まります。市区町村によっては「高齢者あんしんセンター」「おとしより相談センター」「いきいき支援センター」といった呼び名が付いていることがありますが、同じものです。担当がどこか分からないときは、親の住所がある市区町村の介護保険の窓口に電話して、聞いてみてください。必要なものは介護保険の被保険者証です。

被保険者証は、65歳になると市区町村から全員に届きます。健康保険証のようなカードではありません。横に長いものを三つ折りにして使います。色は市区町村によって違います。40歳から64歳の方には、要介護認定を申請したときや、自分から交付を求めたときに交付されます(介護保険法施行規則第26条)。見当たらないときは、市区町村の窓口で紛失届を出せば申請できます。

そのあと、市区町村の調査員が訪問して心身の状態を確認し(認定調査)、主治医に意見書を依頼します。この主治医意見書の作成料は、申請した方の負担にはなりません

入院中なら、病院の相談窓口からでも始められます

親の介護は、入院をきっかけに始まることがよくあります。退院の見通しが立つころに、病院から「家に戻るなら介護保険の申請を」と言われることが多いものです。

病院には、退院したあとの生活の相談にのる職員がいます。医療ソーシャルワーカー(社会福祉の資格を持ち、病院で患者や家族の相談にのる職員)と呼ばれる人たちで、「地域医療連携室」「入退院支援部門」などの部門に所属しています。厚生労働省が示している業務指針でも、この人たちの仕事として「入退院支援・療養支援」が挙げられています。

診療報酬のうえでも、要介護認定をまだ申請していないことや、いまの認定より手がかかるようになったのに区分の変更を申請していないことが、病院が退院の支援に入るべき理由として挙げられています。すでに認定を受けている方も含めて、入院中に、申請の手続きを教えてもらったり、ケアマネジャーとの連絡の相談にのってもらったりすることができます。

主治医から「退院したあとは介護が必要です」と言われたら、まず病院の相談窓口に声をかけてみてください。病院で相談先が見つからないときや、家に戻ってから相談先に困ったときは、地域包括支援センターに相談してみてください。

認定は、申請した日にさかのぼります

ここは、あまり知られていません。

要介護認定は、その申請のあった日にさかのぼってその効力を生ずる。

介護保険法 第27条第8項

結果を待ってからでないと使えない、のではありません。認定は申請日まで戻ります。待つあいだも、見込みの要介護度で計画(暫定ケアプラン)を作り、サービスの利用を始められます。

要介護認定の申請から、認定調査と主治医意見書、一次判定・二次判定、認定の通知、ケアプランを作ってサービスの利用開始までの5つの流れ。法律の定めは原則30日以内、実際の全国平均は39.9日で、認定の効力は申請した日にさかのぼることを示した図

どれくらい待つのか。法律は「当該申請のあった日から三十日以内にしなければならない」(第27条第11項)と定めていますが、同じ条文のただし書きで、市町村は、理由となお要する期間を申請した方に通知したうえで、これを延期することができるとされています。

厚生労働省が公表している最新の集計(令和6年4月から令和7年3月までの申請分)では、申請から結果が出るまでの平均は全国で39.9日。30日以内に収まったのは22.8%でした。内訳は、認定調査に11.1日、主治医意見書に17.9日、審査会の事務処理に16.8日かかっています。申請から認定までに、これくらいの時間がかかると知っておいてください。

認定は7段階です。更新の申請は、有効期間が終わる60日前から

認定の結果は、要支援1・2と要介護1〜5の7段階、それに非該当です。

認定が出たら、次はケアプラン(介護サービス計画)を作ります。作るのはケアマネジャー(介護支援専門員)です。介護の相談に乗り、どのサービスをどれくらい使うかの計画を立てる専門職で、介護保険法に定めのある資格です(第7条第5項)。要介護1から5の方は居宅介護支援事業所へ、要支援1・2の方は地域包括支援センターへ相談します。このケアプランを作ってもらうのに、利用者の自己負担はありません。

認定には期限があります。有効期間は、新規が原則6か月、更新が原則12か月です(介護保険法施行規則第38条・第41条)。市区町村が必要と認めた場合は、新規が3か月から12か月、更新が3か月から36か月(要介護度が前と同じときは48か月)の範囲で変わります。

更新の申請ができるのは、有効期間が終わる日の60日前から、終わる日までとされています(同規則第39条)。期限が過ぎると、その日からサービスは全額自己負担になります。ただし、災害などやむを得ない理由で申請できなかったときは、その理由がやんだ日から1か月以内であれば、更新の申請ができます(同法第28条第3項)。うっかり忘れていた場合はこの扱いにならず、新しく申請し直すことになりますので、認定の通知が届いたら、有効期間が終わる日をカレンダーに書き写しておいてください。

状態が変わったときは、期間の途中でも区分変更の申請ができます(介護保険法第29条第1項)。手がかかるようになったときも、回復したときも、どちらの場合でも申請することができます。回復したときに自分から申請しなかったとしても、とがめられることはありません。ただし市町村のほうも、介護の必要の程度が下がったと認めるときは、区分を変える認定をすることができるとされています(同法第30条第1項)。

16の特定疾病であれば、64歳までの方も介護サービスを利用することができます

介護保険料は、40歳の誕生日の前日が属する月から、生涯払い続けます。64歳までは加入している医療保険の保険料と一緒に徴収され、協会けんぽなら令和8年度の料率は全国一律1.62%(事業主と半分ずつ)です。

40歳から64歳までの方も、介護保険を使えることがあります。加齢に関係する16の病気(特定疾病)が原因で要支援・要介護になった場合です。病名は介護保険法施行令第2条にあります。

特定疾病(介護保険法施行令 第2条)
1がん(医師が回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る)
2関節リウマチ
3筋萎縮性側索硬化症(ALS)
4後縦靱帯骨化症
5骨折を伴う骨粗鬆症
6初老期における認知症
7進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
8脊髄小脳変性症
9脊柱管狭窄症
10早老症
11多系統萎縮症
12糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
13脳血管疾患
14閉塞性動脈硬化症
15慢性閉塞性肺疾患(COPD)
16両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

13番に脳血管疾患が入っています。脳梗塞や脳出血で倒れた方は、40代・50代でも介護保険のサービスを使えます。病気で働けなくなったときに受け取れるお金は、傷病手当金と障害年金に書きました。

気をつけるところが、3つあります

見込みより低い要介護度で、認定が出ることがあります。 暫定ケアプランで先に使い始めた分のうち、上限を超えた部分は全額自己負担になります。サービスを使い始める前に、この点を地域包括支援センターかケアマネジャーに確かめてください。

認定の期限は、自分で見ておく必要があります。 更新の案内は市区町村から届きますが、気づかないまま期限が過ぎると、その日から全額自己負担になります。災害などやむを得ない理由があれば1か月以内に申請できますが、うっかり忘れていた場合は、この扱いになりません。

負担割合は、毎年8月に見直されます。 前の年の所得で判定し直されるからです。親にまとまった所得があった年は、翌年8月から1割が2割・3割に上がることがあります。たとえば土地や建物を売ったときの譲渡所得(特別控除を引いたあとの額)も、合計所得金額に入ります。まとまったお金を受け取る予定があるときは、その翌年の介護費用も合わせて考えておいてください。

総務省の調査では、介護をしている方は629万人で、そのうち365万人が仕事をしながら介護をしています。仕事をしながら介護をしている方でいちばん多いのは、55歳から59歳の方です。この年代では、介護をしている方の4人に3人が仕事を続けています。そのうえで、介護や看護を理由に仕事を辞めた方は、この5年間で47万人。直近の1年間に限っても、およそ11万人いたことが報告されています(令和4年就業構造基本調査)。

親の介護をしながら働くことは、身体的にも精神的にも大きな負担となります。産業医として相談を受けるとき、最初にお伝えしているのは、まず一人で抱えないということです。少しでも負担を減らせるよう、地域包括支援センターやケアマネジャー、勤め先の相談窓口を早めに頼ってください。早く介入してもらうほど、負担を減らすことができます。要介護認定を申請するかどうか迷っている段階でも、相談してみて構いません。

2025年4月からは、介護に直面したことを会社に伝えた方に、会社が介護休業などの制度を個別に説明することが義務になりました(育児・介護休業法の改正)。勤め先の窓口にも相談してみてください。

次の回は、月にいくらかかるかについて触れたいと思います。

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